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25.『反日という呪縛』/正鵠を射る日本近現代史の名著

   山中恒著(勁草書房 2008年11月刊 ¥3150) 


反日

 本書は、「あばれはっちゃく」、「ぼくがぼくであること」、「おれがあいつであいつがおれで」など200以上の名作を書き、幾つもの作品が映画化(大林宣彦監督)されている著名な児童よみもの作家の山中恒(やまなかひさし)さんの書いた日本近現代史です。

 内容は、まことに正鵠を射るものです。

 高校生や大学生が日本の近現代史を学ぶのにこれ以上の書物はないと思われますし、また、専門の学者にとっても必読文献だと思いました。「優れた歴史観」とはどういうものか、の見本のような本であり、感動しました。

 本書の「はじめに」には、その歴史観が明瞭に現わされています。「靖国神社」とは何か?の解説が、小泉元首相や安倍元首相の言動の問題点と共に示されていますが、まじめに考える人なら誰でもが深く納得する叙述でしょう。

 本書を読めば、複雑に見える日本の近現代史が、きちんとした意味として了解されます。体験に裏打ちされた豊かで鋭い人間観の下、綿密な考証に基づく歴史ドラマが平易に示されていますし、意味了解を助ける貴重な写真も豊富です。戦前の日本がどれほど強固な「国体原理主義」の思想で貫かれていたか、その思想が現実にどのように作用したか、いまなおしているかが分かります。

 古い自民党の政治家もきちんと本書を読めば、自身の歴史観がいかに劣ったものであるかが了解されるでしょう。大きな普遍性をもつ稀に見る名著だと思います。文部科学省も推薦本とすべきでしょう。

2009/01/30
武田康弘

(以上、タケセンの『思索の日記』から )


古林 治

     
2009年2月3日
 
 
   
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