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21.憧(あこが)れ・想(おも)う世界 (Bさんへの手紙)

 『理想論じゃ生きてけないのよ。』
 『世の中金だよ。』

 誰しもこんなことを一度や二度言われたことがあるでしょう。
でもちょっと待ってください。これ、大きな勘違いがあります。そんな風に言う人のことを現実主義者ともいいますが、このこと自体、その人の描く現実の理想像(世俗的価値が支配する世界)なんです、実は。だから 『理想論じゃ生きてけないのよ。』、『世の中金だよ。』という人自身があるおぞましい理想論にしがみついて生きてることになります。

 タケセンのところへ『理想と現実のギャップに悩む』 Bさんが相談に来ました。とてもよくある話なので、それに対するタケセンの答えを載せてみることにします。じっくり噛みしみていただけるとうれしいですね。
 もう少し気を楽にして、自分の理念やロマンをお互いに語り合いましょう。


(あこが)れ・想(おも)う世界 (Bさんへの手紙)

 〈ロマンや理念〉は、〈具体的な目標〉とは異なり、憧れ・想う世界です。決して手の届かない夢の世界ですが、しかしその「幻想価値」なくしては、私たちは人間としての意味をもった生を営むことが出来ません。

 よいことや美しいことを希求し続ける心が失われれば、人間は実存するのではなく、ただ生存しているだけの存在に陥(おちい)ってしまいます。

 手に取ることも目に見ることも出来ないロマンや理念の世界 - よいこと・美しいことそのものの世界 - 憧れ・想う世界、この「幻想価値」の世界が唯一、人間の人間としての生を支えるのです。

 即物的 - 現実主義的な想念の中では、人間は人間として生きることができません。人間にとって真に実在するものとは、価値と意味の世界=「幻想世界」であって、只の事実や只の物質や只のシステムや只の規律や・・・というものは、存在しないからです。

 ロマンや理念、憧れ・想う世界を失えば、人間は、輝き、張りや艶(つや)、悦(よろこ)びや愉(たの)しみを失って、灰色の固まりへと転落してしまいます。
心は消えてしまうのです。

2002年11月16日 武田 康弘


 

2002年11月24日  古林 治

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