志賀 直哉
(しが なおや)
(1883-1971)
山の手のお坊ちやん。学習院の異端
(いたん)
者。「私」の感性を拠点にした体制への反逆。
天皇をバカラシイ存在とみなし、天皇制を批判。
(50才半ばを過ぎ小説が書けなくなってからは、親和的になる。)
学習院を二度落第。夏目漱石を慕
(した)
って東大の英文科に進むが、東大の権威を嫌い中退。
「夏目さん」だけを慕い、授業には出ず、「友達耽溺
(たんでき)
」。
運動神経抜群。スポーツ、特に機械体操が得意。
鋭利でかつ強く、率直。心身のすみずみまで行き届いた神経。
「自己熱愛」- 自我への限りなき誠実と、徹底が、純粋
(じゅんすい)
意識としての「私」の世界を開く。
『自分は文法は少しも知らないが、頭脳の構造には忠実に書く。』
筋肉質の力強い文体。
あくまで「私」の心身に直接響
(ひび)
く美を信じる。
内側から惨
(にじ)
み出る自然な美を尊重し、過剰なもの・装飾的なものを嫌悪する。
芸術至上主義を厳しく批判、生活の優位を主張。平和な家庭生活を目がける。
迷信・俗信を嫌う。子供と動物を愛す。枇杷
(びわ)
の花(木)が好き。
澄みきった透明で美しい目。深く 冴
(さ)
えて 優しく、極めて男性的一意志的な目。
遺書により、記念碑の類を建てることを禁止。葬儀は無宗教で行われた。
1999年3月
武田康弘